シリアルアントレプレナーとは

一言でいえば、複数の企業を“連続して”創業・成長・Exit(上場/売却)する起業家のことです。日本語では連続起業家
背景には、単発の挑戦では得にくい市場理解・採用力・資金調達の型を、複数回の起業で磨き、学習を次の事業へ再投資する発想があります。
重要なのは、結果としてエコシステムに経験・人材・資本が循環する点です。前回の投資家や幹部が次の挑戦に再参加し、初速が上がる。失敗の学びも資産になります。

どんな目的で使う

典型的な流れは、創業→拡大→Exit→資本/人的資源の再配分→次の創業
目的は大きく三つです。第一に、パターンを蓄積してPMF(製品市場適合)到達の再現性を高めること。第二に、資本政策と採用の勝ち筋(誰をいつ口説くか、どの条件なら合意するか)をテンプレ化すること。第三に、前回のネットワークを次の事業の営業・提携・調達へ直結させること。
ドメインは多様です。前回と同じ市場で隣接課題を攻める、あるいは共通のGo-To-Market(PLGやエンタープライズセールス等)を横展開するなど、“勝ち筋の再利用”が軸になります。

近い用語との違い

パラレルアントレプレナー同時並行で複数事業を運営。対してシリアルは時系列で連続させ、集中度と学習の深さを優先します。
リピート起業家は広義で同義ですが、投資家としての関与が強まる場合はファウンダー兼エンジェル/VCと呼ばれます。
多店舗展開の事業主は同一モデルの拡張が中心。シリアルは新しい問題の探索と検証に重心があり、ゼロ→イチの再現が評価軸になります。
また、大企業内で連続的に新規事業を立ち上げるコーポレートイントレプレナーは、資本調達や持分設計が異なります。

規模感・目安

あくまで一般論ですが、1案件の滞在期間は3〜7年程度、短期なら2〜3年での売却、長期なら10年超もあります。
Exit後に創業者が得る株式の現金化は、持分が数%〜数十%の幅で、セカンダリー(既存株の売却)を一部活用することも。
次の挑戦に投入する初期資本は、自己資金+エンジェル出資(数百万円〜数千万円)+シードラウンドの組み合わせが一般的です。
チームは前回の幹部数名を核に再結成
するケースが多く、採用速度とカルチャーフィットで優位が出ます。

実務でよくあるつまずき
  • 成功体験の過信:市場や時代が違うのに前回の打ち手をそのまま適用
  • ブランド依存:前職の看板に頼り、本質的な提供価値の検証が遅れる
  • 人的/資本の重複管理:前会社の役割・NDA・競業避止の整理不足でリスク化
  • 資本政策の歪み:初期から過度に高評価を狙い、次ラウンドで苦戦(ダウンラウンド)
  • 燃え尽き:連続起業ゆえの意思決定疲労家庭/健康の軽視
まとめ

シリアルアントレプレナーは、学習・資本・チームを循環させてPMF到達の再現性を高める生き方です。同時並行ではなく連続で挑むからこそ、集中と検証の深さが武器になります。
次の一歩として、①ドメイン仮説(何が“自分たちの勝ち筋”か)②資本政策ルール(希薄化の上限、セカンダリーの是非)③再結成コアチーム(3〜5名)の役割と報酬設計④前回投資家・顧客へのヒアリング計画を一枚にまとめてください。前航海のログを整理すれば、次の航路はより短く、より安全に描けます。