ハンズオン支援とは

一言でいえば、助言だけで終わらず“現場の手”まで提供する伴走支援です。背景には、創業初期のチームが「やるべきことは見えたが、手と仕組みが足りない」という現実があります。
ハンズオン支援は、採用・営業・資金調達・KPI設計・オペレーション改善などに支援者が直接関与し、週次の実務レビューや共同実行まで担います。重要なのは、成果基準(KPI)と役割分担を明確化し、支援が学習と成果に正しくつながるように設計されていることです。単なる助言の積み上げではなく、“回る仕組み”を作るところまで責任を持つ姿勢が核になります。

どんな目的で使う

使いどころはプレシード〜シリーズA前後の「手数と精度を一気に上げたい局面」。
例として、①0→1の再現性づくり(顧客開発→MVP→価格検証→初期売上)、②獲得〜活性〜継続のボトルネック解消(AARRRのどこが漏れているかの特定と実装)、③採用と評価制度の立ち上げ(職能定義・採用要件・オンボーディング設計)、④資金調達準備(ピッチ・データルーム・用語整備、投資家打診の実行)、⑤ガバナンス/ISMS等の“最小限の型”整備
イメージとしては、レース中にピットインし、メカニックが一斉に車の性能を底上げしてコースへ戻すようなもの(比喩はここまで)。速度と安全の両立が狙いです。

近い用語との違い

メンタリングは主に助言中心。ハンズオンは実装まで関与し、成果のKPIと責任の所在を明記します。
アクセラレーター短期・選抜制のプログラムで、カリキュラム+小口出資がセットになりやすい。ハンズオンは個社最適の随時伴走で、期間・範囲を柔軟に設計。
インキュベーター常設の“場と基盤”提供が中心。ハンズオンは目標KPIに直結する実務代行・共同実行が色濃い。
コンサルティング成果物の納品が主眼になりがち。ハンズオンは運用に乗るまでが守備範囲で、実装→学習→改善の反復を支援の核心に据えます。
運用代行は特定業務の外注。ハンズオンは経営課題からKPI設計まで一気通貫で、内製化をゴールに据える点が異なります。

規模感・目安

一般論として、期間は3〜9カ月週のコミットは数時間〜週1〜2日程度に設計されることが多いです。報酬は月次リテイナー+成功報酬が典型で、ストックオプション等のインセンティブ(例:数%未満)を組み合わせるケースもあります。
支援領域は、Go-To-Market(獲得チャネル構築、価格・プラン検証)/採用・評価制度/ファイナンス(調達準備・資本政策)/オペレーション設計/データ計測基盤など。成果指標は
北極星指標(North Star Metric)と連動させ、週次のKPIレビューを運用ルールに落とします。

実務でよくあるつまずき
  • KPIと役割分担の曖昧さ:支援の範囲・責任・意思決定権限が不明確
  • “やり切り”で終わる:実装後の運用・移管計画がなく、学習が定着しない
  • 依存化:支援者にオーナーシップが偏り、チームの自走が遅れる
  • 情報開示の不足:データアクセス・会議体・報告頻度の合意がなく、意思決定が遅延
  • 報酬設計の不整合:短期成果偏重で中長期価値(内製化・品質)が毀損
まとめ

ハンズオン支援は、助言+実装+運用定着を一気通貫で行い、KPIに直結する成果を共同で作る取り組みです。価値の源泉は、役割分担の明文化、データ駆動の週次運用、内製化までの設計にあります。
次の一歩として、①目的KPIの特定(例:初回価値到達率、商談→受注率、MRR成長率)、②SOW(作業範囲)と責任分界点の文書化、③運用カレンダー(週次レビュー、隔週改善スプリント、月次取締役会報告)を合意してください。“回る仕組み”を作って自走に橋渡しする——それがハンズオン支援の到達点です。