株式会社OUI CEO 清水 映輔
”世界の失明を半分にする”、そんな大きな夢を真っすぐ語ったのは株式会社OUI(OUI Inc.)代表取締役の清水映輔氏だ。OUI Inc.はスマートフォンに取り付ける事で眼科診断が可能な医療機器「スマートアイカメラ」を開発。大きな夢を実現する第一歩を踏み出している、今医療界で最も注目されているスタートアップの1つだ。今回のスタートアップ白書では代表取締役の清水さんに開発の経緯とこれからの展望について伺った。
Q1.自己紹介と「夢」について

私は株式会社OUI(以下、OUI Inc.)代表取締役 清水映輔と申します。 私は実は眼科医でして、慶應大学でドライアイの研究をしていたり、横浜にあるクリニックで眼科医として働いています。眼科医をやりながらこのスタートアップ”OUI Inc.”を立ち上げて、“世界の失明を半分にする”という事を目指しています。

OUI Inc.のミッションは世界の失明を50%減らし、眼から人々の健康を守ることです。このスマートアイカメラは、スマートフォンに取り付けることで眼の診察が可能になる医療機器です。この機器を世界中の広めることによって、開発途上国では治療のための診断を届け、先進国では予防のための診断を届け、そして世界の失明を半分に減らす、という事を考えています。
その「夢」のきっかけを教えてください!
僕たちがこのスマートアイカメラのプロジェクトを考えたきっかけは、2017年の10月にベトナムで無料の白内障手術ボランティアに参加した事です。このボランティアでは色々な企業からの寄付を受けて、手術に必要な機材や薬を現地まで持っていきました。その機材や薬をハイエースに積み込んで、何時間もかけて移動して、そこで白内障の手術をしまくるというようなボランティアでした。1つ2つの車で持っていくので積み込める機材の量も限られていて、手術のための機材や薬などしか持っていけなかったんですね。 なので診察する機械がなく、要は手術による治療しかできない状態でした。そのような状況下で、現地の方からは診察時にペンライトを持ってきてください、という風に言われたんですね。何故ペンライトが必要なのかなと思ったら、現地の方は皆さんペンライトで光を眼に当てて本当に最低限の診察みたいなことをしてたんですね。
眼科医が診断に使う細隙灯顕微鏡や眼底カメラなどの機器は、特定の光を当てて眼から反射した光を拡大して観察する、という仕組みを持っています。ただそういった機械は全て据え置きで、しかも大きいんですね。さらに日本で1台買ったら500万円とか1000万円とか非常に高価なので、開発途上国ではそういった設備が一切なかったんです。加えてベトナムに行った時はペンライトも電池が粗悪なので、すぐに切れてしまう。そういった現状の時に、皆さんのスマートフォンの光を使って診察していたんですね。当然このスマートフォンの光は眼の診察に最適化されたものではないので、このスマートフォンの光とカメラに何かしら細工をすれば眼の診察が出来るようになるんじゃないか、と思ったのがきっかけです。
Q2.スマートアイカメラについて

スマートアイカメラについて教えてください!
スマートアイカメラはスマホのアタッチメント型の医療機器です。 特徴としては、スマートフォンの光源とカメラを使って、眼科の先生が診断するのに必要な光の形をつくって照射して、眼の画像を拡大して撮影するという機能があります。非常にシンプルさにこだわった製品で、例えばこのスリットモデルという前眼部を見るモデルであれば、スマートフォンに被せるだけで眼の診察ができます。眼科を受診したことがある方はわかると思いますが、眼科の治療では色々な光を当てるんですね。例えばスリット状の光や拡散光で診察をするんですが、このスマートアイカメラにはそういった機構が備わっています。さらに、スマートアイカメラで撮影した動画がアプリケーションでファイリングされて記録されます。スマートフォンにこだわった理由の一つとして、こういった画像を記録することで遠隔診療が出来るんじゃないかと考え、今開発を進めています。

現在どれくらいのスマートアイカメラが利用されていますか?
現在スマートアイカメラは日本をはじめとして 7つの地域で医療機器になっています。 日本 ヨーロッパ、東南アジアではカンボジア、ベトナム、インドネシア、アフリカではケニア、そして中南米ではブラジルです。そういった地域で現在利用されているものに加え、その他にも色々な地域で実証を進めていて、約60カ国以上で200台以上のスマートアイカメラが現在使われています。
今後はどういった展開を考えていますか?
日本国内では保険診療で使えるのもあり、現在100台程度が現場で使われています。その約半分が眼科の先生が持っていて、もう半分は眼科でない先生が人間ドックや健康診断で使われているので、そういったところをどんどん広げていって、日本を制覇したいと考えています。また、同時に海外でも医療機器の認証を進めています。海外での医療機器の申請には、やはりビジネス面で考えて進めていく必要があります。そのため、現在私たちには世界中に60カ国以上のパートナー医師がいますが、彼らに機器を最初に使用してもらい、エビデンスを作成してもらっています。実際すでに、15本以上の論文を英文論文として発表しています。そういった各地の医師と協力して、世界中にスマートアイカメラを普及させることを目指しています。
Q3.株式会社OUI Inc.について

起業を志したきっかけを教えてください!
起業を志したきっかけは、私が眼科医として一人前になる前に、スタートアップを作れば個人としても何かできることがあるんじゃないかと思って、法人を作ったという経緯があります。
創業期のエピソードを教えてください!
ベトナムのボランティアから帰ってきてから、一番最初のプロトタイプを自分たちで作りました。僕は医師ではありますけれども、起業やビジネス、エンジニアリングといったバックグラウンドがないので、たくさん自分で調べたりしました。ちょうどその頃、慶應大学がスタートアップを支援する取り組みを行っており、そこで出会った人たちとのつながりを通じてプロトタイプの作成を始めることができました。プロトタイプを作るのには1年半ぐらいかかり、作成において最も難しかったのは、やはりスマートフォンの光でした。スマートフォンの光は眼の撮影に特化していないため、診察使うには課題がありました。しかし、こういったガジェット(スマートアイカメラ)を使用することで、眼の撮影に適した光を生成できるようになり、このタイミングがめちゃめちゃ興奮した瞬間でした。
Q4.起業家としての自身について

自身が起業家として大切にしている事を教えてください!
自分が起業家として一人前とは思っていないですし、すごいとも全然思っていないですけど、これだけは大切にしている事があって、それは”自分で自分に制約をつけない”ことですね。これがだめだ、とかこれが無理だ、っていうのは基本的に無理じゃないので。変な話ですが、僕は男ですけど女の子になろうと思ったら、やろうと思ったら出来るわけじゃないですか。なのでやろうと思えば出来ることはたくさんあるし、仕事をお願いしたら断る理由を探して断るような方達がいらっしゃるんですけど、ちょっともったいないなと思うので、やっぱり可能性を無くさないためにも、”できない理由を探さない”ということが一番重要だと思います。
10年後の未来ではOUI Incによって世界はどうなっていると思いますか?
10年後には スマートアイカメラを使って世界の失明が半分になっていると思います。さらに、眼科に行って眼の検診を1年に1回やることで早期発見・早期治療をすることが当たり前の世界になってます。
というのも、眼科って何か症状がないとなかなか受診しないじゃないですか。検査が多くて待ち時間も長いし、眼薬を差すのが苦手な方もいます。でも考えてみれば30年前、日本人は歯がボロボロの人が多かったですが、CMや有名人の啓発活動によって歯の健康意識が高まった結果、今では多くの人が白い歯になっています。この歯の例の様に、「現代では眼をしっかり守ることがエチケット」として重要視され、眼の問題が生じた際には早期発見・早期治療することが現代人のエチケットになっていると思います。
何かを志している人に何かアドバイスをください!

まず、最初の一歩踏み出すのってすごく大変だとは思うんですけど、まずやってみるのがいいと思います。世の中にはやってみないとわからないことがたくさんあります。ただ、変なやり方とか他と違うやり方で一歩踏み出すのではなくて、正しいやり方で一歩を踏み出すのがいいと思います。例えば上司に怖いから言えない、とか言われたら怒られるんじゃないか、みたいなことってあると思うんですけど、言ってみないとわからないので言ってみるとか。それだけでも大きな一歩なので、その一歩をどんどん積み重ねていくことによって、知識も増えていくし、経験も増えていくので、まずは人とアクションを起こすということが重要ではないでしょうか。
Q5.最後に
OUI Inc.のこれからについて教えてください!

OUI Inc.のスマートアイカメラには、さまざまなモデルがあります。スリットモデルや直像鏡という眼の中を見るものだったり、現在医療機器登録中の眼底カメラなどいろいろなモデルがあります。こういった機器を組み合わせることによって、
なると思います。ただ、これは既存の機械のリプレースメントではなくて眼科になかなか通えない方々、例えば離島在住の方々などに眼科診療を届けることや、日本のような先進国における失明を予防する、予防の観点から早期発見・早期治療を行うための取り組みです。例えば健康診断とか人間ドックみたいなところで新しい項目をつけてもらって、二次検診で眼科にちゃんと行ってもらう。そういった啓発活動も行っていきます。
スマートアイカメラで診断を届けて、我々のパートナーの先生方に治療をしていただいて、かつ、皆さんを啓発して眼の健康意識を上げることによって、世界の失明を半分にして、眼から人々の健康を守るそういった取り組みを行っていこうと思います。さらに、スマートアイカメラ自体のハードウェアとしての価値だけではなくて、ソフトウェアを使った遠隔診療 と、今開発中の画像を集めた眼科診断支援AIを 医療機器化していきたいと考えています。これらを実際の臨床で使えるようにすることによって、既存の診療スタイルをガラッと変えて、より眼科に行けないような患者様を眼科に近づけるような、そういった診療スタイルを提案していこうかなと思っています。
清水さん個人としてのこれからについて教えてください!
僕個人としてのこれからは、やはりスマートアイカメラを使って世界の失明を半分にして、そして眼から人々の健康を守ること。これに対しては人生をかけて取り組んでいこうと思っています。仮に世界の失明が本当に半分になった時は、めちゃくちゃ楽しい世の中になってくると思うんですけど、こういう事業をやっていく中で、色々なアイディアがどんどん生まれていくので、そういったアイデアを全て実現していきたいなと思ってます。また、僕の趣味って多分働くことなので、すごく楽しく働いてるんですね。なので、ずっと一生をこうやって楽しく働いていってるんじゃないのかな、という風に思っています。